top of page

医療とAIの未来を切り開く
ー 起業家・慶応大学5年生の中原楊さんに聞く ー

スクリーンショット 2024-04-10 18.46.16.png

慶応大学5年の中原さん(左)と筆者(右)
※中原さんの素晴らしい画像にも関わらず、私は画質が悪い+影が顔にかかってしまい、
記念写真が台無しになっていますが、

インタビュー記事が素晴らしいことには変わりありません。

ぜひ最後まで御覧ください。

ACPSCの徳永康太です。私はACPSCの企画として、「医学部生の生成AIの最適な活用方法」をテーマに、生成AIについての理解を深めることを目指し、専門家へのインタビューを予定しています。第一回目のインタビュー相手は、医学部生ながら、医療分野で起業家として活躍する中原くんです。中原くんは現在慶応大学医学部5年生であり、音声認識AIと要約AIを用いたカルテ入力支援システムの開発と実装を手がけ、現在は20人以上のメンバーが所属する会社の共同代表として活躍しています。このインタビューでは、私と同じ学年の中原くんに、医療分野におけるAIの可能性や、医学部生の持つべきマインドセット、医師としての未来について質問しました。

――― 中原くん、貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。

まず、中原くんの経歴と生成AIのカルテ開発の経緯について教えていただけますか?

 

中原くん: 現在、慶応大学の五年生で臨床実習を行っています。データサイエンスの研究室にも通いながら、株式会社Pleapの共同代表も務めており、アルバイトを含めると20人以上のメンバーがいます。医学部に入学してから、私は医療技術の進化に大きな興味を抱いていました。特に、AIの潜在能力に注目し、医療分野での応用方法を研究し始めました。臨床実習中、先生と話したときに、先生たちがあまりにも多くの時間をカルテ記載にかけており、改善することはできないかと考え、現在のmedimoの開発に着手しました。私達のmedimoは、生成AIを活用して、患者のカルテ作成を支援するものです。このシステムは、医師と患者のやりとりから書き起こしをリアルタイムで作成し、重要な情報を抽出し、カルテに転記できるレベルのSOAP記録に整理します。これにより、医師の負担を大幅に軽減すことができます。今後は働き方改革が進むため、需要は伸び続けるものと考えております。

―――お話を聞いていると、同じ医学部生とは思えないほど多くのことに取り組んでいる印象です。中原くんのモチベーションの源は何でしょうか?

 

中原くん: ありがとうございます。やはり楽しさが大きな要因ですね。研究や開発に取り組む中で、新しいアイデアが浮かんできて、それを実現するプロセスが楽しいと感じます。もちろん、失敗も多いですが、そのプロセス自体が楽しいですね。

―――そうなんですね。つらいことひっくるめて「楽しい」と言い切れる中原くんはタフですね。続いて、中原くんの生成AIの見解についてお伺いします。まず一点目に医療分野における生成AIの登場について、中原くんはどの程度インパクトのあるものだと捉えていますか。

 

中原くん: これは過去にインターネットが登場した際と同様に、もしかするとそれ以上に大きな影響を与える出来事だと思います。インターネットの登場により、製造業やサービス業をはじめとするあらゆる業界のあり方が変化しましたが、生成AIの登場により、頭を使って仕事をするホワイトカラーの仕事も大きく変わる可能性があります。そう遠くない将来、医療分野も大きく変容するでしょう。

―――生成AIの出現がそこまで影響力のあるものだとは思ってもいませんでした。それでは医療現場において、医師として身につけるべき能力についてどうお考えですか?

 

中原くん: 多くの人は、医師とは「知識と手技を駆使して患者さんを治す人」だと捉えていますが、私にとって、医師の役割は、治療技術に限らず、患者を望ましい状態に導く存在と捉えています。その手段は多岐にわたり、AIを活用することも含まれます。診断や治療においても、AIの支援がますます重要になるでしょう。だから、将来の医師に求められるスキルは、患者とのコミュニケーション能力を強化することと、AIを適切に活用して治療計画を立てる能力かなと感じます。

―――次に医学部生の生成AIの使用の話題に移ります。どのように生成AIを医学部生活に組み込めるとお考えですか?

 

中原くん: 例えば、私も行っていますが、レポートの作成にAIを活用することも有益だと思います。ただし、単なるコピー&ペーストではなく、参考文献の検索や表現方法の学習に利用することが重要です。論文をより短い時間で大量に読み込むことができ、質の高い勉強が可能になります。また、私自身はしていませんが、国家試験やCBT対策において、生成AIを使用して似たような問題を生成し練習することも可能です。さらに、OSCE対策として、ChatGPTに患者役の情報を組み込んで練習することで、臨床スキルの向上にも役立ちます。

―――最後に医学部生に向けてメッセージをお願いします。

 

中原くん: アドバイスするなんて、とんでもないですが、強いて言えば、以下の二点ですかね。1つ目は、AI技術を含めて、これから新しい技術に恐れずに探求し、深く理解する努力をすることだと思います。いいか悪いか、何ができて、何ができないかというのは、実際に自分でいじり倒すくらいやってみないとわからないと思います。他人の意見に盲目的に従うのではなくて、自分自身で考えることで、その新しい技術のもつポテンシャルを理解できると思います。そして、二点目として、将来のキャリア選択において、AIの可能性を考慮することも大切です。医療分野も変化していく中で、AIは今では想像もできないほど大きな役割を果たすでしょう。私達が働く頃の医師の働き方は今、臨床実習で見学する医師の働き方と大幅に変わっていることは想像に難くありません。今の生成AIではなく、今後の生成AIの可能性を考えてキャリアを選択することが大事じゃないかなと思いますね。

―――本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

​感想

今回のインタビューでは、慶応大学5年生でありながら起業家として活躍する中原くんに貴重な洞察をいただきました。これまでの会社設立の大変なプロセスを「楽しい」で済ませてしまうほどの胆力のある中原くん、そしてこれからもその姿勢を貫こうとする彼に同学年だからこそ、強い刺激を受けました。中原くんのメッセージは、生成AIを今後使う可能性のあるすべての学生にとって価値のあるものであると思います。これからのご活躍、応援しています!

 

文責: ACPSC 名古屋大学医学部医学科5年 徳永康太

bottom of page