菱沼俊哉
横浜市立大学 医学部医学科 5年
ACPに参加したきっかけ
海外留学に向けて、学生の間しかできない特別な経験を積みたい。また、委員という立場を通して今までにない学びの場を創造したい。
米国内科学会(ACP)日本支部学生委員会
島根大学5年
筧みなみ
香川大学4年
夏目皓介
はじめまして!米国内科学会日本支部学生委員会の筧みなみ(島根大学5年)、夏目皓介(香川大学4年)です。
今回から ”Worldwide 総合診療!” と題して、日本とアメリカをはじめとした諸外国の総合診療ってどう違うの?
プライマリケア、家庭医療、GPとかいろいろな言い方があるけどその違いって?海外で総合診療医として働きたいけど
よくわからない!そもそも海外ではどのような医学教育を受けているの?などなど、主に医学生をはじめとした方々に
世界の総合診療についてわかりやすく概要をお届けしていきたいと思います!また、日本人として、世界の医療とともに日本の医療について良いところも知っていくことで、母国を諸外国にPRしていくことも大事なことだと考えており、
特に総合診療や海外で働くことに関心がある医学生にとって有益な情報をお届けできればと思います!
各回では総合診療のキャリアパス、医学教育、医療制度などに焦点を絞って、情報をお届けしていく予定です。
また、同時に少しでも英語に触れる機会を増やすことが出来ればと思い、英語による概要のスライドも併せて掲載して
いますので、ぜひご覧ください!
さて記念すべき第一回は、「総合診療に関するキャリアパスについて」です。日本では総合診療科といった診療科や
かかりつけ医など、総合診療的な医療を提供している場面はいくつかありますが、そもそも日本で総合診療医になるにはどのようなキャリアパスをたどるの?アメリカで総合診療したいけど、そのキャリアパスってどうなっているの?
などについてお伝えしていきたいと思います!
目次
■日本の総合診療に関するキャリアパスについて
■アメリカの総合診療に関するキャリアパスについて
# 家庭医療専門医(family medicine)
# ホスピタリスト(hospitalist)
■ 日本の総合診療に関するキャリアパスについて
2018年度の新専門医制度発足に伴い、日本における総合診療の担い手として、総合診療専門医制度が新たにスタートしています(今年度に総合診療専門医が初めて誕生。)。医学生としては、大学卒業後の初期研修(2年間)終了後に
総合診療の専攻医(3年間)となり、総合診療専門医を取得する流れとなっています。また、近年では総合診療専門医のサブスペシャリティーとして、「新・家庭医療専門医」、「病院総合診療医(創設予定)」が専門医取得後の
キャリアパスのひとつとして考えられているようです。総合診療専門医は、他の専門医との大きな違いとして、内科、
外科、小児科など様々な領域のcommon diseaseを主に担うことになります。
■アメリカの総合診療に関するキャリアパスについて
アメリカにおける医師のキャリアは、4年制大学卒業後にmedical school(4年制の専門職大学院)に入ることに
なります。その後、Residencyを経て専門医を取得し、必要に応じFellowshipとしてさらに専門研修を受けることに
なります。日本との大きな違いは、日本の初期研修に相当する過程を学生時代に経験し、卒業後は日本の基本領域専門医に相当する研修を受けることです。また、アメリカで総合診療を担う医師は大きく2つあり、家庭医療専門医(family medicine)とホスピタリスト(hospitalist)です。以下にその概要をご紹介します!
# 家庭医療専門医(family medicine)
Medical school卒業後、3年間のfamily medicine residencyとして研修を行うことになり、修了後に専門医を取得
します。またその後、必要に応じてサブスペシャリティーを選択しますが、必須ではありません。サブスペシャリティーとしては、addiction medicine, faculty development, geriatrics, obstetrics, preventive medicine, research, sports medicineがあります。また、アメリカでのプライマリケアは、家庭医療専門医、一般内科専門医、小児科専門医が主に担っていますが、家庭医療専門医のプログラムには新生児、小児科、産科、外科などの経験が必須となっており、
公衆衛生や予防医療もその研修に含まれていることが大きな特徴となっています。詳細はAAFP(American Academy of Family Physicians)が発行したレジデンシーのGuidebookが非常に分かりやすいのでぜひご覧ください(https://www.aafp.org/students-residents/medical-students/become-a-resident/match/strolling-through-the-match.html)。
̻# ホスピタリスト(hospitalist)
アメリカにおける特徴的な職種として、病院における入院治療を専門とするのがホスピタリストです。ホスピタリストは入院日数の短縮による医療費削減が目的でつくられた職種であり、病棟の中心的人物として病棟管理、医学生等への
教育を中心的に担う役割があります。先程の家庭医療専門医と異なり、ホスピタリストといういわゆる専門医はなく、
家庭医療、一般内科や小児科それぞれの研修プログラムに更なる研修を付加するような形でホスピタリスト養成
プログラム(5年)が提供されているようです。
日本では患者側が自由に病院を選択できるという特徴もあり、プライマリケアを担ってきた地域の中小病院や診療所
では、家庭医療とともにアメリカにおけるホスピタリスト的な役割も一人の医師が担っていることが多くありますが、
アメリカでは家庭医療とホスピタリストが一般的な職種として存在していることは非常に面白いなあと感じているところです。日本でもホスピタリストなど、総合診療専門医のサブスペシャリティーの動きが近年活発なようですので、ぜひ今後もその動きを追っていきたいと考えています!
(※記載内容について、できる限り正確に保つように努めていますが、正確性・完全性・最新性等を保証するものではありませんので、予めご了承ください。)